どこにでもあるチェーン店からこだわりの個人カフェまで、コーヒーが売りのお店は多々あれど、なぜか少ない「紅茶のおいしいお店」。
ペットボトルティーじゃない、ティーバッグを浸した色つきのお湯でもない、ちゃんとおいしい紅茶が飲みたいんだー!と夕日に向かって叫んだことのある人は多いはず(?)
このシリーズでは、筆者が実際に訪れた紅茶のおいしいお店をゆるーくご紹介していきます。おもに神奈川県から東京都内にかけてのエリアが中心になります。
第9回も新潟のお店をご紹介。新潟市中央区の隠れ家カフェ、シュガーコートをご紹介します。
魔女の家に迷いこんだかのような世界観
シュガーコートは新潟市中央区の西堀通にある個人経営のカフェです。紅茶と手作りのお菓子・お食事をコンセプトとしたお店です。
個人的に、公式サイトから受ける印象と実際のお店の印象には、かなりギャップがあるように感じます。
サイトでは華やかでヨーロピアンな雰囲気が前面に押し出されていますが、実際のお店の雰囲気を一言で表すならば“魔女の家”。
「西の魔女が死んだ」という映画をご存知でしょうか。ちょうどあんな感じです。あれの和風古民家バージョンのような。
何の変哲もない街中に突如現れる、こぢんまりとした異空間。一歩踏み込んだらそこはオーナーさんの世界。静けさ、木の家、植物、花、お菓子に紅茶。
さっそく迷いこんでみましょう。
生い茂るグリーンがお出迎え
外観はこんな感じ。こぢんまりとした二階建てのお店です。
味わいのある古民家に、生い茂るグリーン。すでにただならぬ雰囲気が漂っています。なんだかどきどきしますね。
入店直後、口頭で注文?
足を踏み入れて、まず目に留まるのはカウンター席とキッチン。常連さんらしきお客さんと、オーナーさんらしき女性がいました。
こんにちは~。
オーナーさん「ランチですか?」
はい、そうです。
オーナーさん「えーとね、予約なしだと、お料理とデザートと紅茶のおまかせランチね。1,200円。それでいい?」
(選択肢がない!?)はい、それでお願いします。
オーナーさん「紅茶は何にする?」
何がありますか?
そこから怒涛の口頭説明&チョイス。ホットかアイスか、フレーバードティーか普通の紅茶か、ストレートかミルクか、煮出しミルクティーか英国式ミルクティーか。そうして絞ったなかからさらに、どの茶葉にするか。
言われるがままに答えていき、気づいたら注文が完了していました。入口に立ったまま口頭で。
しょっぱなからお店の個性が大爆発! 洗礼を受けたような気分です。
お料理は気まぐれ?
筆者はとある事情で豚肉が食べられないので、その旨伝えたところ、
「うーん、お料理は一種類だから……。今日はチキンね」
対応してくれたのかたまたまだったのか、なんとも判別がつきません。
そしてこのあと入ってきた別のお客さんには、私のお料理とは全然別のパスタが出されていました。いわく、チキンのお料理がもうなくなってしまったとか。
そんな具合に、お店は完全にオーナーさんのペース。愛想を振りまくことなく、のんびり気まま。もしかしたらお料理も、その日その場の気まぐれなのかもしれません。
雰囲気満点の古民家空間
席はご自由にとのことなので、いい感じの場所を探しつつ、店内を探索してみました。
一階の奥に四人掛けのテーブル席がひとつ。急な木の階段を登った先に二階席があります。
おお~、これはまた雰囲気たっぷり!
静かだし、迷いこんだ感がすごいよ……!(どきどき)
部屋は薄暗く、窓からの自然光で照らされています。古く、しかしよく手入れされたていねいな空間。非日常の空間に迷いこんでしまったかのようです。
窓の向こうには車道と、近代的な複合ビル。周囲は地方都市らしい商店街。
何の変哲もない日常から、壁一枚、窓一枚隔ててこの空間が存在するというすごさ。伝わるでしょうか……。
店内にはそこかしこにささやかなグリーンが飾られています。
静かで穏やかな、なんとも美しい光景です。
きょろきょろしていると、オーナーさんがテーブルの支度をしに上がってきました。
「あら。明かり点ける?」
そう言って、席の上にぶら下がった照明に手を伸ばし、パチッとスイッチを入れてくれました。
その照明がまた素朴で可愛らしいんですよね。ドライフラワーか何かのリースで囲われていました。
砂糖は二種類、自由に使える
紅茶に入れるお砂糖は、ブラウンシュガーかグラニュー糖が選べます。
テーブルにシュガーポットが置いてあり、上記のどちらかが入っています。好きに移動させて使ってよいそうです。
オーナーさんのおすすめはブラウンシュガー。筆者もこちらを使ってみることにしました。
飾り気のないていねいな紅茶がおいしい
紅茶は「英国式ミルクティー、ホット、着香なしの普通の紅茶、茶葉おまかせ」で注文したところ、ウバが出てきました。地元の紅茶屋さんのものを仕入れているとか。
茶葉はポットに入ったまま提供されます。ティーストレーナーを通してカップに注ぎます。
ストレートで飲んでみると、極めて心地よい絶妙な渋みと豊かな旨みが味わえます。香ばしく、それでいてスーッとするいい香りです。ていねいに淹れられた、非常においしい紅茶でした。
ブラウンシュガーを入れると、今まで飲んだことのない味に驚きました。鼻に抜ける香り、クールで渋くてかっこいい味という印象です。
ミルクを入れると軽やかなミルクティーに変身。コクがあって濃厚、というのとは趣が異なります。
なんというか、このお店の雰囲気にすごく合う味……!
うん。飾り気がなくてシンプルな素朴な紅茶。おいしいね!
量はティーカップ二杯ちょっとくらい。多すぎず少なすぎず、ちょうどよい量でした。
手作りの素朴なお料理を味わう
お料理はチキンと野菜の煮込みと、バゲットが四切れ。バゲットにはなすのパテと、バナナとキャラメルのジャムが塗られています。量としては少なめです。
お味はというと、素朴! いい意味で本当に素朴です。
味付けは最小限。非常に繊細な、素材の味を活かした優しいお料理です。久しぶりにこういうおいしさを味わいました。普段、いかに味が濃く、主張の強い食事ばかりとっているかを思い知ります。
なんだかとてもていねいな気持ちになっていきます。
デザートも甘すぎず自然なお味
デザートプレートが運ばれてきたとき、最初は思わず「無造作にもほどが!」と心の中で笑ってしまいました。
しゃれっ気ゼロ。でも、お菓子のひとつひとつはていねいに作られている。そう、これがこのお店の世界観なんですよね。
ピリッと辛くて甘いメレンゲをはじめ、ケーキ、プリン、ビスケットなど、どれもが甘すぎず自然な味わい。お料理同様、じっくりと味わいたくなるデザートでした。
このお店はアートだ!
紅茶と食事をいただきながら「このお店はアートだな」と感じました。
商売っ気がなく、静かで、穏やかで、心が洗われる隠れ家空間。手作りの温かみとていねいさを楽しみ、ひとつひとつゆっくりと味わい、今このひとときをじっくり過ごす。
今の社会に、こんな空間がいったいどれほど存在するでしょうか。オーナーさんの世界観や価値観が染み入るように伝わってきます。
おそらく、万人受けするお店ではありません。独特な雰囲気に引いてしまう人もいるかも。(実際、たまたま居合わせた別のお客さんはかなり戸惑っていました)
ここまで読んでいただいて、このお店の世界観に共感した方。何とも言えず気になった方。新潟を訪れたらぜひ行ってみてください。忘れていたものに出会えるかもしれません。
こんなときにおすすめ!
ひとりで静かに過ごすのにぴったりのお店です。紅茶を片手に本を読むのもいいかも。没頭できそうです。
また、こういった古民家のカフェは、日本茶やコーヒーを売りにしていることが多いので、紅茶のお店はなかなかにレア。そういった意味でもおすすめです。
注意点としては以下のようなところが挙げられます。
たとえば、デートで無難なお店に入りたいときなどには不向きです。初めてのお客さんが「一瞬出ようかと思った……」と言うくらい、独特の雰囲気のあるお店です。どきどきしながら、非日常の世界観を楽しむつもりで訪れましょう。
また、席について、お冷が来て、メニューを開いて注文……というような、いわゆる普通のお店でもありません。お料理の選択肢がないので、食べられないものがある人はご注意ください。(予約であれば対応してくれそうな気がします)
基本情報
席数は筆者がざっくり数えたものなので、目安としてご利用ください。
お休みなど、最新の情報はInstagramを見るのがおすすめです。コンスタントに更新されています。素敵な写真を楽しみたい方もぜひ。