どこにでもあるチェーン店からこだわりの個人カフェまで、コーヒーが売りのお店は多々あれど、なぜか少ない「紅茶のおいしいお店」。
ペットボトルティーじゃない、ティーバッグを浸した色つきのお湯でもない、ちゃんとおいしい紅茶が飲みたいんだー!と夕日に向かって叫んだことのある人は多いはず(?)
このシリーズでは、筆者が実際に訪れた紅茶のおいしいお店をゆる~くご紹介していきます。おもに神奈川県から東京都内にかけてのエリアが中心になります。
第5回は横浜駅直結の老舗の紅茶専門店、「サモアール 相鉄ジョイナス本店」をご紹介します。
1974年開業のレトロな紅茶専門店
サモアールは1974年、横浜駅西口に開業した紅茶専門店です。
商業施設の中に老舗の本店があるのはちょっと不思議な感じがしますが、相鉄ジョイナスがあるのは横浜駅の西口側。憶測ですが、過去に移転があったのかもしれません。
実に40年以上の歴史があるというのは驚きですね。なんちゃってではない本物のレトロが味わえるお店です。
ロシアでの喫茶スタイルは、導入部こそ中国式を模倣していましたが、やがてロシア式といえる独自の習慣が誕生しました。その中心となったのが「自ら沸かす」という意味を持つ、金属製の湯沸かし器サモワールでした。中央に炭火などの燃料を入れ、周囲の空洞部に水を注ぎ、熱湯が完成すれば準備は完了。濃く抽出した紅茶をティーカップに注ぎ、お湯を足して好みの味わいに調整します。
レストランフロアの一角にさりげなく佇む
お店は相鉄ジョイナスの地下二階、レストランフロアの一角にさりげなく佇んでいます。落ち着いたえんじ色とレンガ調の外装が目印です。
座席は店内側と、通路に面したテラス側の二つに分かれています。
店内はそこまで落ち着いていない
内装はまさしく昭和レトロの純喫茶といった趣。照明は暗めです。
BGMはなぜかあまり落ち着いていません。若者向けのおしゃれカフェに流れているような音楽でした。
客層としては二人連れのマダムが多く、話し声が絶えません。BGMと相まってわさわさした感じがします。
接客もお店の雰囲気に対してやや忙しなく、そっけない印象です。おすすめのお茶など、情報をじっくり聞きたくても聞けないというのは残念です。
“駅直結の商業施設内のお店”として考えれば妥当なところではあるのかもしれません。
驚くほどバラエティーに富んだメニューの数々
メニューの本は手作り感満載。そして分厚い! めくってもめくっても紅茶、紅茶、紅茶。圧巻です。
茶葉の種類はもちろん、アレンジも非常に豊富です。むしろメニューの冒頭に名を連ねているのはほとんどがアレンジティー。ロイヤルミルクティーなどの正統派から見たこともない風変わりな一品まで、本当に幅が広いです。
名物のロイヤルミルクティーは絶品!
お店の一押しを尋ねたところ、ロイヤルミルクティー、それもアイスが人気とのこと。
注文時、砂糖を入れていいかどうか聞いてくれます。この日はデフォルトの砂糖入りでお願いしました。
出てきたのがこちら。ミルクと紅茶が二層に分かれているタイプですね。
実は元町にもこれと同じ、二層に分かれたロイヤルミルクティーを出すお店があるんです。横浜の紅茶専門店どうし、何かつながりがあるのかもしれませんね。気になります。
さて。あらためまして、二層に分かれたミルク(というかクリーム?非常に濃厚です)と紅茶をかき混ぜていただきます。
んんんんん! おいしい~~~!!
華やかな香りが口いっぱいに広がり鼻に抜けていきます。お味はこっくり系ではなくすっきり系。とても軽やかな印象で、甘さも絶妙です。夏場なんか至福かもしれません。
このあと詳しくご紹介しますが、ケーキとセットにできる飲み物はなんとロイヤルミルクティーのみ。選べるのはホットかアイスかだけなんですが、飲んで納得。これほど爽やかなロイヤルミルクティーならどんなケーキにも合いますね。
ケーキセットの主役は紅茶
ケーキセットは1,000円。ケーキの種類は8種類ほどあり、サンプルをテーブルまで持ってきてくれます。ドリンクは前述のとおり、ロイヤルミルクティーのホットとアイスから選べます。
ケーキの見た目はどれもとても素朴。今風の紅茶専門店に慣れていたのでちょっと驚きましたが、そういえばここは昭和レトロの喫茶店なんでした。
この日はレアチーズケーキを注文してみました。
お味はというと、可もなく不可もなく。上に乗っかっているのはアプリコットジャムでしょうか。ほんのりとしたレモンの酸味がいい感じです。やや舌にのぺっと残るような口当たりです。
個人的にケーキセットは圧倒的に紅茶が主役、ケーキはその引き立て役という印象でした。
ストレートティーも安心と信頼のおいしさ
前回は一押しのロイヤルミルクティーを味わったので、この日はシンプルなストレートティーをいただいてみました。
ルシアンジャムティー(700円)は地元のお店・きくやマルシェとのコラボメニュー。神奈川県茅ヶ崎市にあるジャムと野菜のお店だそうで、こちらのオリジナルジャム三種(ルバーブ、しょうが、みかん)の中からひとつ選びます。
紅茶はオーソドックスなセイロンです。ポットにブロークンの茶葉が入った状態で提供されます。茶こしを通してカップに注いでいただきます。
なめらかな口当たりと、どこまでも穏やかな味わい。思わずほーっと一息ついてしまいます。雑味は皆無。純粋な旨みと香りを楽しめます。
ジャムも食べなきゃと思いつつ、ついついお茶だけで楽しんじゃう!
おいしいストレートティーって、ある意味最高の贅沢だよね。
量はティーカップ二杯弱、気持ち少なめです。
差し湯を用意してもらえますが、時間が経っても不思議とえぐくならず、使わずに飲み切ることができました。最後の最後、カップの底にたまった茶葉の粉から多少苦みが出た程度でした。
ジャムはみかんを選びました。はちみつが入っているのでしょうか、ナチュラルな味わいながらしっかり甘いです。
器は案外深く、こう見えてかなりたっぷり盛られています。ティーカップ二杯分の紅茶に対しては十二分な量です。
ルシアンティー(ロシアンティー)ということで、ジャムを口に含みながら紅茶を飲んでみると、これがまた美味! おいしいジャムと上質な紅茶の組み合わせがとっても素敵です。シンプルながら繊細で、お腹に負担のかからない、大人っぽいティータイムが楽しめます。
こんなときにおすすめ!
さすが長年営業されているだけあって、紅茶のおいしさは間違いありません。目移りするほど多種多様な紅茶メニューを思う存分楽しみましょう。
注意点としては以下のようなところが挙げられます。
- 14:00以降、店内側は喫煙可能になる
- ケーキは紅茶の引き立て役
- 意外とわさわさしている
- 接客はあまりよくない
私が行ったときはたまたま喫煙者がいなかったので大丈夫でしたが、おいしい紅茶を飲みにきているのに隣でたばこを吸われてしまったら……と考えるとやはり困りますね。たばこが苦手な人は、14:00以降の店内側の席は避けたほうがよいでしょう。
そしてやはり駅商業施設内のお店なので、忙しなさ、行き届かなさは否めません。せっかくの専門店なので、好みに合わせた提案やその時々のおすすめなど、十分に聞くことができないのは残念です。
馬車道のほうにより大きな支店があるようなので、いずれそちらも利用してみたいです。
基本情報
- 店名: サモアール 相鉄ジョイナス本店
- 所在地: 神奈川県横浜市西区南幸1-5 ジョイナスB2
- アクセス: 横浜駅直結
- 営業時間: 11:00~23:00
- 定休日: 年中無休
- 席数: 43席
(2019年4月6日現在)